JUFA 全日本大学サッカー連盟

インカレ
『平成29年度 第66回全日本大学サッカー選手権大会』準々決勝戦マッチレポート
2017/12/20
 12月18日(月)、2017年度を締めくくる大学サッカー最高峰の大会、『平成29年度 第66回全日本大学サッカー選手権大会』(インカレ)の準々決勝が行われた。ベスト8に残った精鋭が、ハイレベルな戦いを各会場で繰り広げた。



○連覇を狙う前回大会の覇者・筑波大学(関東地域第1代表)と、関西の強豪・阪南大学を激戦の末に制した東京国際大学(関東地域第6代表)の一戦。

 関東勢同士の対戦となった試合は、関東チャンピオンの筑波大が立ち上がりからボールを保持し、主導権を握る展開となった。しかし前半序盤の6分、東国大はサイドバックの3番・中村彰吾が左サイドを突破。パスを受けた10番・安東輝がペナルティーエリアに侵入したところを、筑波大の17番・近藤太が止めようとしてペナルティーキックを献上してしまう。これを10番・安東が落ち着いて決め、東国大が先制する。その後は筑波大が圧倒的にボールを支配し何度となくゴールに迫るが、東国大のGK、21番・古島圭人のビッグセーブとセンターバックの5番・楠本卓海の身体を張ったプレーでゴールラインを割らせない。
 後半に入ると、筑波大はエースの11番・中野誠也を投入。同点に追いつくべく猛攻を仕掛ける。11番・中野がゴールネットを揺らすシーンもあったもの、これはオフサイドの判定でゴールならず。対する東国大も27番・宇高魁人を投入するなどしてチャンスを作るが、こちらもゴールまでは結びつかない。結局、両チーム追加点を挙げられず、東国大が1点を守りきって試合終了。ディフェンディングチャンピオンの筑波大が、同じ関東代表の東国大に敗れる結果となった。
 「1点を取れなかったということが、力のなさの現れ」と、試合を振り返ったのは敗れた筑波大の小井戸正亮監督。たたみかけるような攻撃で東国大を圧倒していたかのように思われたが「シュート数は90分を通して7本。相手の守備が固くて隙はなかったし、言うほどの決定機はなかった」とコメント。昨年度王者は「ただただ、力が足りなかった」という後悔をにじませてインカレの舞台から去った。
 一方、インカレ初出場ながらチャンピオンチームを破る番狂わせを演じ、準決勝進出を決めた東国大。前田秀樹監督は「筑波大は後ろで回すことが多いので、先制点を取れればいけると思っていた」としてやったりの表情。得点の起点となる19番・町田ブライトが累積警告による出場停止という厳しい状況の中で迎えた準々決勝だったが、逆に「1トップ2シャドウで前目に守備的な選手を入れることにした」と守備を強めて筑波大の攻撃に対応。「筑波大は縦に入ったときにスイッチがオンになる。そのスイッチを入れさせないことが重要だった」と、狙いどおりの展開に持ち込んだ。得点はPKの1点に留まったが「PKもがむしゃらに前に蹴ったのではなく、しっかりつないで突破した結果」と満足顔。次は、同じく関東代表の流通経済大学と対戦する。東国大の快進撃は、はたしてどこまで続くのか。


○2回戦でシード校の大阪体育大学を破り、関東・関西地域以外で唯一の勝ち残りとなった福岡大学(九州地区第1代表)と、初戦に辛勝して駒を進めた流通経済大学(関東地区第3代表)の一戦。

 試合は福岡大の乾真寛監督が「ポゼッションやパスサッカーではないが、ガチンコの戦いができたと思う」と振り返るように、互いに立ち上がりからフィジカルの強さと高さを武器にゲームを展開。両者ともにロングボールを使って攻撃を組み立てようとする。すると29分、左コーナーキックを獲得した流経大は2番・小池裕太がゴール前に蹴り入れたボールを、今大会初先発の28番・アピアタウィア久が落とし、それを4番・今津佑太が右足でダイレクトに決めて先制する。しかし福岡大もすぐさま猛攻を仕掛け、36分には左サイドから展開したボールを7番・中村太一がつなぐと、最後は14番・山下敬大が右足を振り抜き強烈なミドルシュートを放つ。「相手のシュートが素晴らしすぎた」と敵の指揮官である流経大の中野雄二監督も認めるゴールで、福岡大が同点に追いつく。
 後半は福岡大が攻撃のリズムを掴むが、流経大も5番・守田英正とGKの21番・新井栄聡が体を張った守りでゴールを割らせず、スコアが動かないまま試合は延長戦へ。すると延長戦開始直後の92分、中央で28番・アピアタウィアが浮き玉のパスを前線へ送ると、10番・ジャーメイン良が折り返し、途中出場の11番・渡邉新太が頭で合わせて1-2と再びリードを奪う。この1点を守りきりたい流経大だったが、101分には、福岡大も13番・石田が左サイドからクロスボールを入れ、これを中央で10番・梅田魁人が頭で繋いで最後は14番・山下がGKとの1対1を冷静に対応して左足でシュートを流し込む。
 再び同点となり迎えた延長戦後半は一進一退の攻防戦が続いた。しかし、このままPK戦に入るかと思われた終了間際の120+2分に流経大が相手のハンドでペナルティーキックを獲得。これを10番・ジャーメインが落ち着いて決め、流経大が3度目の勝ち越しに成功。ほどなく試合終了のホイッスルが鳴り、2-3で流経大がベスト4進出を決めた。
 流経大の中野監督は「もう少し(守りの)固いゲームになるかと思っていた。福岡大の攻撃に対して、もう少しケアする必要があったかもしれない」としながらも「福岡大対策として入れた大柄な選手からセットプレーで点を取れたのは収穫」と、ルーキーの28番・アピアタウィアの活躍を喜んだ。一方、「今季はポイントとなる試合で勝てていない」と振り返り、次戦の東京国際大学戦こそが重要とコメント。関東対決となるだけに「お互い力関係のわかっている相手だけに、徹底して守られると難しい」と警戒を見せた。


○総理大臣杯の覇者で夏冬2冠を狙う法政大学(関東地区第5代表)と、3年ぶり3回目の出場で初優勝を目指す関西の王者、びわこ成蹊スポーツ大学(関西地区第1代表)の戦い。

 夏の全国覇者と関西王者の戦いは、激しいゴールの奪い合いとなった。前半立ち上がりは両チーム落ち着いた守備を見せたが、17分には法大の8番・紺野和也が右サイドからカットインしてそのままシュート。キーパーが弾いたこぼれ球を、29番・森俊貴が押し込んで法大が早い時間に先制する。しかし、びわこ大も44分、20番の佐藤諒選手が倒されてPKを獲得。これを18番・井上直輝が右上に決めてスコアを1-1とする。
 後半に入ると法大が攻める時間が長くなり、58分には法大がコーナーキックを獲得。13番・末木裕也選手が蹴り込んだボールに、24番・大西遼太郎が右足でダイレクトに合わせて再びリードを奪う。しかし79分、びわこ大がまたもや法大に追いつく展開に。サイドチェンジから、23番・柳田健太がアーリークロスを上げると、それを18番・井上が落とし込んで試合を振り出しに戻した。このまま延長戦に突入するかと思われた86分、法大は途中出場の18番・松澤彰が、相手ディフェンダーのパスをカットするや、そのまま左足を振りぬき勝ち越し弾。18番・松澤の2試合連続ゴールで法大がみたびリードを奪った。びわこ大も最後にはDFの5番・宮大樹を前線に上げて得点を狙うが、そのまま試合終了。法大がシーソーゲームを制し、準決勝に駒を進めた。


〇2回戦を快勝した順天堂大学(関東地区第2代表)と、対照的に接戦を制して勝ち上がってきた関西大学(関西地区第4代表)の一戦。

 順大のキックオフで始まったゲームは、立ち上がりから順大が主導権を握る展開となった。順大は7番・名古新太郎を中心にボールを保持しながら細かくパスを繋ぎ、少しずつ関西大のゴールに迫る。対する関西大は3番・鯉沼晃を中心とした堅い守りを展開。ボールを奪ってからの速攻でチャンスを作ろうと試みる。試合が動いたのは8分だった。順大の14番・杉田真彦が左サイドからドリブルでボールを運び、12番・貫場貴之へ。パスを受けた12番・貫場が体勢に整えた後に放ったシュートがゴールネットを揺らし、順大が先制する。その後も試合は順大ペースで進むが、決定機を生かせないまま36分には関西大が動きを見せる。7番・藤村洋太が中盤でボールを奪取し、9番・加賀山泰毅へとボールを送ると、9番・加賀山はペナルティーエリア外からミドルシュートを放つ。順大GKは距離のある位置からのシュートに意表をつかれる形となり、ボールは伸ばした手の指先をすり抜けてゴールイン。関西大が試合を振り出しに戻して前半を終えた。
 後半は両チーム一歩も譲らず、激しい球際の攻防戦が続いた。順大は58分、U-20日本代表のタイ遠征から前日帰国したばかりの11番・旗手怜央を投入。67分にも長身FWの9番・松島奨真をピッチに送り出して、追加点を狙う。しかし互いに惜しいシーンを作りながらも得点に結びつけられず、同点のまま試合は延長戦に突入。延長戦に入って攻勢を強めた順大は95分、途中出場の23番・三国スティビアエブスが右サイドを深く切り込んでクロスを上げると、9番・松島がヘディングで折り返し、最後は11番・旗手が右足で押し込み2-1に。選手交代の起用が的中し、順大が値千金のゴールで再びリードする。その後も順大がボールを保持して優位にゲームを進め、順大の勝利が決まるかと思われた終了間際の120+1分、またもや関西大がスコアを動かした。6番・塩谷仁の上げたクロスを11番・村中耀一が頭で流し、それを拾った17番・竹下玲生が左足一閃。ゴールネットにシュートを突き刺し、土壇場で同点に追いついた。試合は延長線でも決着がつかず、PK戦に突入。両チームそれぞれ一人ずつPKに失敗し、迎えたサドンデスの8巡目。先攻の関西大はPKに成功、しかし順大の7番・名古のシュートを、関西大のGK、22番・白澤慶志郎がストップ。この時点で関西大の準決勝進出が決定し、劇的な幕切れで接戦を制した関西大がベスト4入りを決めた。



 準決勝は12月21日(木)に行われ、柏の葉公園総合競技場では関東地区第6代表・東京国際大学と関東地区第3代表・流通経済大学が対戦。またNACK5スタジアム大宮では総理大臣優勝/関東地区第5代表・法政大学と関西地区第4代表・関西大学の試合が開催される。
 準々決勝では初出場の東国大が前大会王者の関東地区第1代表・筑波大を破り準決勝に進出。今大会きってのダークホースに名乗りを上げた。一方、関西大も明治大学に続き順天堂大学というシード2校を倒してベスト4入りするなど、4校のうち実に2校がシード権をもたない大学となった。ジャイアントキリングを狙う2校の快進撃はどこまで続くのか。ファイナリストまでは残り1試合。決勝への切符を懸けた熾烈な戦いを勝ち抜くのはどのチームとなるのか。