JUFA 全日本大学サッカー連盟

インカレ
「アパマンショップPresents 平成27年度第64回全日本大学サッカー選手権大会」決勝戦マッチレポート
2015/12/23
アパマンショップPresents 平成27年度第64回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)

決勝戦マッチレポート


 1985年以来、30年ぶりの”関西決戦”となった『アパマンショップPresents 平成27年度第64回全日本大学サッカー選手権大会』。浦和駒場スタジアムで開催された決勝戦は、総理大臣杯優勝校であると同時に関西リーグ優勝校の関西学院大と、その関学大に敗れて関西第2代表となった阪南大が対戦した。

 立ち上がりは阪南大が主導権を握る展開となった。今季は関西リーグと関西選手権で3度関学大に敗れている阪南大だったが、左サイドの11番・外山凌選手、ボランチの8番・重廣卓也選手が積極的にボールをもって攻めあがり、たびたび関学大ゴールを脅かす。「入り方はよかった」と、須佐徹太郎監督、そのまま関学大から先制点を奪いたいところだったが、関学大の体をはった守備に阻まれ、またゴール前でのプレーが正確性に欠き、得点に結びつけることができない。

 一方の関学大は、今大会4得点をあげているエースの13番・呉屋大翔選手が累積警告で出場停止。これまでトップ下にいた9番・出岡大輝選手を1トップに上げて決勝に臨んだものの、「決勝戦の緊張感もあって自分も含めたみんなが体が重いな、と感じていた」と、関学大8番・小林成豪は振り返る。それでも「(主将の3番・井筒)陸也を中心に声をかけあって、もう一度いちからやり直した」(小林)。その成果が出たのは14分。左サイドバックの16番・小川原一輝からのボールを受けた14番・福富孝也が出岡にパスを送ると、出岡がこれをワンタッチで切り返してゴールに突き刺す。「先制点が大きかった」(小林)という関学大は、28分にも6番・小野晃弘の突破からコーナーキックのチャンスを獲得。ゴール前の混戦の中でのこぼれ玉を、再び出岡が左足で押し込んで追加点をあげる。

 阪南大もここまで6得点の13番・前田央樹にボールを合わせて反撃を試みるが、「相手にセカンドボールを拾われて、落ち着かせられてしまった」(阪南大14番・松下佳貴)。37分には、小野の左コーナーキックから15番・米原祐が叩きつけるようなヘディングシュートを決めて、関学大が3点目をマーク。「自分たちの守備がはまらず、相手に自由にボールをもたれていた」(松下)という阪南大に対し、関学大は攻撃の手を緩めることなく、41分にもゴール前で細かくボールをつなぎ、最後は出岡が冷静に流し込んで4点目。「たぶん大学に入ってからは初」という出岡のハットトリックで、関学大が前半だけで4点という大量得点で阪南大を突き放した。

 前半は「ディフェンスが崩壊してしまった」(須佐監督)という阪南大だが、後半に入ると守備を修正。関学大の攻撃を防ぎ、シュートまで持ち込ませないが、一方で阪南大もなかなか決定的なシーンを機会を作ることができない。「後期リーグでは自分たちが阪南大に0-3とされて、そこから追いついたので阪南大もまだまだ来ると思っていた」(井筒)という関学大は最後まで集中力をもって守りきりタイムアップ。「4-0をひっくり返すことは簡単ではないが、割りきって攻めよう」(松下)と巻き返しを狙っていた阪南大ですが、一矢を報いることなく関学大が4-0のまま勝利。本大会の初優勝を手にするとともに、夏の総理大臣杯とあわせて夏・冬の全国大会2冠を達成した。

 また試合後には表彰式が行われ、最優秀選手に関学大の主将でDFの井筒陸也、ベストGKに1番・上田智輝、ベストDFに米原祐、ベストMFに11番・森俊介、ベストFWに出岡大輝が選ばれた。


■関西学院大・成山一郎監督

 関西ではずっと阪南大さんに鍛えてもらってきていましたので、まず、決勝戦で阪南大さんと戦えたことがうれしかったです。今年のリーグ戦で勝つだけは勝たせてもらいましたが、阪南大さんと戦うときはいつも押されっぱなし。今日の後半も、「さすが阪南大さん」という試合内容でしたし、また鍛えていただいたという思いでいっぱいです。
 そんな中、なぜ優勝できたかというと、ここに座っている井筒陸也キャプテンをはじとする4回戦がチームをまとめ、引っ張ってくれたこと。そして去年や一昨年の卒業生たちがくやしい思いをしながらも、チームをインカレの決勝戦につれてきてくれたからだと思っています。そこで一度全国舞台の決勝を経験できたことが、大きかったのではないかと思います。


■阪南大・須佐徹太郎監督

 阪南大は大会前に中盤のふたりを故障で欠きましたが、その分粘り強い試合ができるようになりました。関西学院大さんとは、2008年に関西リーグが通年制になってから5年間負けていませんでしたが、ここ3年ほどはまったく勝てず、今その10倍返しくらいを受けています。今日も積極的に行こうと言っていて、入りはすごくよかったと思います。しかし途中で、球際で負け始めたら選手が非常に消極的になってしまった。パッシブプレッシングになって、ディフェンスが崩壊してしまった。それがすべてだったと思います。後半は立ち直ってくれましたが、4-0の差は難しかったですね。それでも点を決められればよかったのですが、押している割にはシュートにまで持ち込める形が少なかった。まだまだ力不足です。来年またやり直します。


■井筒陸也選手(関西学院大学・主将・DF・MVP)

 今年のチームは、去年のインカレ決勝に負けてから、そのくやしさをバネに1年間やってきました。夏の総理大臣杯でも優勝することはできましたが、冬のインカレを絶対穫りたいという気持ちでここまできました。本大会では、途中で流通経済大や明治大といったチームと大変な試合も戦ってきましたが、そこで満足せずに、しっかり決勝までモチベーションをもってやってこられたことがすべてかと思います。
 ただ、決勝戦は点差ほどの実力差はなかったと思うし、たまたまウチの選手がいいタイミングで点をとってくれて楽なゲームになっただけだと思っています。今年は阪南大と何回も対戦していて、その中で自分たちが伸びた部分もあったので、その恩は返さないといけないと思っていました。今年はまだ阪南大に負けていないので、阪南大もリベンジを狙ってくるだろうと考えていました。だからこそ、その強い気持ちに負けないように。関西の後期リーグでは僕たちが0-3にされて、その後に追いついた試合があったので、阪南大もまだまだくるというのはわかっていましたし、何がなんでも勝ちたかった。だから4点差があっても、万が一のことを考えて、4回生を中心にしっかり声を出して後半に臨みました。
 まだまだ、今年のチームも足りない部分はあったと思いますが、それは来年の関学大の課題として続いていくことなので、後半たちにはがんばってほしいと思います。
 MVPについてですが、今大会の僕は何もしていないと思っています。みんなのおかげで獲らせてもらったMVPだな、という気持ちが強いです。


■出岡大輝選手(関西学院大・FW・ベストFW)

 今日は呉屋選手がいないので、自分が点をとってチームを勝たせようと思っていました。こうやって自分が点をとって勝てたことで、少しは呉屋選手に恩返しができたのかな、と思います。
 リーグ戦でも、阪南大と戦うときはいつも押し込まれる印象がありました。相手はけっこう上がってくるのがわかっていたので、自分がサイドの裏を狙って起点になるということは意識していました。ただ、今日の自分は1トップということで、1トップはまず点をとらなければならない。それは呉屋選手を見てわかっていました。今日の試合でそれができたということは、これから自分のプラスになっていくかな、と思います。
 ハットトリックという結果は予想外でした。たぶん大学に入ってから、公式戦では初めてだと思います。2点目をとったあと、ハットトリックを意識しましたが、あまり考えすぎないようにしていたので、まさか前半のうちに達成できるとは思いませんでした。素直にうれしかったですし、今日はとりあえず自分が点をとるという気持ちをもって試合に臨んだので、それが3点という数字につながったのかな、と思います。
 呉屋選手とはずっと一緒にやってきたので、決勝に出られないというのは正直ショックでした。けれどそこで下を向くわけにはいかなかったし、何より「呉屋選手がいないから勝てない、点が入らない」とは言われたくなかった。だから自分が点を入れて勝てたのはうれしかったです。それだけはホンマ、言われたくなかった。負けたら絶対に言われると思っていたので(笑)。
 呉屋くんとは学部も同じで一緒に授業を受けることも多かったので、いつもお世話になっていました。サッカーの面でいえば、彼の常にゴールに向かう姿勢というのは、まだまだ自分には足りないところ。来年1年間、取り組んでいかなければならないと思っています。ただ、僕はあんな能力はないので、できることからコツコツと。自分ができるのは少しでもボールを収めて、前を向いてサイドに散らして、またゴール前に入っていって勝負すること。それは常に意識しています。
 今年は4回生が常に引っ張ってくれていたのですが、下級生もそれについていくだけではなく、主体性をもって動けていた。そういう意味では4回生の支えになれたと思うし、4回生への恩返しもできたのではないかと思います。


■小林成豪選手(関西学院大・MF)

 4年間、しんどいことも多かったですが、こうして最後に笑顔で終われたことはよかった思います。ただ個人的にいえば、今日の試合は3本指に入るくらい悪かった試合だと思います。いつもならガンガン仕掛けて上がっていくのに、今日はほとんど上がれなかった。成山監督には申し訳ない気持ちでいっぱいです。だから嬉しさ半分、悔しさもあります。4年間、迷惑をかけっぱなしだったので、最後はこのインカレ決勝で恩返しができたらいいなと思っていたのですが……。チームとしては優勝できましたが、個人としては……ひと言でいえば悔しいかな、という感じです。
 でも1年の最初の頃は、まさか全国2冠、関西含め4冠がとれるとは思っていなかった。最初に辛い思いをしてよかったなと思ったし、プレー面でも人間的にも成長したので、関学大のサッカー部には感謝しています。


■松下佳貴選手(阪南大・主将・MF)

 これまでの関学大との対戦では、呉屋にほとんど点ををとられています。だから、口にした選手はいませんでしたが、今日は呉屋がいないということでほっとしている部分はあったかもしれません。
 今日は相手にセカンドボールを拾われて、落ち着かせられてしまう場面が多かった。相手に主導権を握られるというよりは、うまく自分たちの守備がはまらなくて、自由にボールをもたれていたというか。そういう意味では力負けだったと思います。4-0というのは難しいスコアで、ひっくり返すことは簡単ではない。それでもハーフタイムには、4失点している以上攻撃的にいかなければならないと監督を始め全員が言っていて。そこは割りきって、気持ちを切り替えていこうと思ったのですが……。
 このような大舞台のゲームで、自分がゲームを作らなければならないにも関わらず、それができなかったのは課題です。そういう状況でこそ自分がゲームを勝たせられるような選手にならないと思っているので、今日の自分の出来は最低な出来だと思います。正直、試合に負けたこと自体に涙は出ませんでしたが、大学4年間を振り返ってみるといろいろなことがあったので、自然と涙が流れてしまったというのはあります。この大学4年間は、僕の中で本当に大きな4年間でした。阪南大に来ていなかったらプロになることもなかったと思いますし、須佐監督をはじめコーチの方にも厳しく指導していただいて、今の自分があると思います。楽しいことだけではなく、しんどいことも多かった。でも「ああ、終わったんだな」と思うと、こみあげるものは少しありました。