ついに決勝を迎えた『2025年度 第49回 総理大臣杯 全日本大学サッカートーナメント』。最終戦の舞台に残ったのは、2021年大会以来2回目の決勝進出となる関東地区第2代表・東洋大学と、こちらは2023年大会以来3回目の決勝進出、関西地区第6代表の関西学院大学。ともに直近の決勝では準優勝に甘んじており、どちらにとっても"雪辱の一戦"となった。
試合は両チーム、それぞれの特徴がよく出た見応えのある拮抗した展開となった。後半は東洋大が何度となくゴールを狙いながらも、関学大もカウンター攻撃からチャンスを作り、どちらも決めきれないまま試合は終盤へ。このまま延長戦にもつれこむかと思われたが、83分に東洋大のラッキーなゴールが決まり1-0に。そのまま東洋大が逃げ切って初優勝。東洋大が昨年のインカレ優勝に続き、年度をまたいでの全国大会連覇を達成した。
決勝 結果・トーナメント表
マッチレポート
東洋大学 1(0-0)0 関西学院大学 @キューアンドエースタジアムみやぎ
試合は立ち上がり、関学大が内田康介、棟近禎規、山本吟侍らが積極的に攻撃を仕掛けて立て続けにチャンスを作るが、東洋大も次第にボールを保持して主導権を奪取。互いにボールを奪ってからの切り替えが速く、拮抗した白熱の攻防戦となった。だが結局「決定的な場面を作れていないわけではないが、最終的には得点できてない」(東洋大・井上卓也監督)という状況のまま、両チーム無得点で試合を折り返すことになった。
膠着状態の中、先に動いたのは関学大だった。「もう少しボールを持ちたい」(関学大・早崎義晃)との狙いもあり、後半の頭からボランチの米田和真を投入。一方では、ボールをしっかりつないで仕掛ける東洋大に対してカウンター攻撃も狙うが、「後半はカウンターを仕掛ける位置がちょっと低くなりすぎた」(同監督)。だが対する東洋大も関学大の守備を崩し切るまでは至らない。徐々に激しくなる雨の影響もあり、両チーム少しずつ疲労が見えてきた83分、先制点は思いもよらぬ形で生まれた。東洋大は中盤でボールを奪った鍋島暖歩が、ゴール前に抜け出した湯之前匡央めがけてロングパスを入れるが、湯之前の足にはわずかに合わず。しかし「それがフェイクみたいな形になって」(東洋大・鍋島)ワンバウンドしたボールがゴールネットを揺らす。ラッキーな形の先制点となったが「相手がかなり引いていたので、シュートを打つ回数やゴール前に入れるボールを増やしていこうという話をハーフタイムにしていた。それが結果的に点に結びついたのかもしれない」(鍋島)。その後は関学大も猛攻を仕掛けて1点を追うが、最後までゴールを割ることなく試合終了。東洋大が鍋島の挙げた1点を守りきり1-0で勝利。総理大臣杯初優勝を果たした。
昨年のインカレ優勝に続き全国大会優勝を遂げた東洋大・井上監督は「この大会は、1点差を争うような僅差の試合や、終盤まで試合が動かないなど簡単な試合がひとつもなかった。タフな戦いだったが、選手たちはほんとによく戦いきった」と5試合を戦い抜いた選手たちをねぎらった。試合内容については「どちらかというと関学大さんのやろうとしていたことがよく出た試合。我々は、相手の守備の形を効果的に崩す回数がそう多くはなかった」と冷静に分析。それでも「昨年のインカレ優勝で得た自信、そしてインカレに優勝したことで出場できた天皇杯の4試合、特にJクラブと対戦した3試合で身につけた自信がこの大会ではよく現れていたと思う」とチームの成長に目を細めた。
天皇杯では柏レイソル、アルビレックス新潟のJ1勢に連勝。昨年度天皇杯王者のヴィッセル神戸をあと一歩にまで追い詰めるなどして注目を集めた東洋大。その分、今大会では相手に研究されて苦しむ試合も少なくなかったが「自分たちがボールを持てない時にも焦れずにどういうプレーを選択するのか。またいい局面でどういうプレーを選択するのか」を、天皇杯での経験から学んだと主将の山之内佑成は言う。天皇杯という特別な大会だけの"ジャイアント・キリング"に終わるのではない。着実に経験と成長を積み重ねが、本大会での"初優勝"に結びついたことは間違いない。
表彰
優勝・フェアプレー賞:東洋大学
準優勝:関西学院大学