JUFA 全日本大学サッカー連盟

インカレ
「平成28年度 第65回全日本大学サッカー選手権大会」1回戦マッチレポート
2016/12/09
 12月7日(水)、2016年の大学サッカーを締めくくる大会となる『平成28年度 第65回全日本大学サッカー選手権大会』(インカレ)が開幕した。1回戦はプレーオフを勝ち抜いた3校を含む、全16チームが熱い戦いを繰り広げた。


@江戸川区陸上競技場

○北海道地区第1代表としてインカレ出場を決めた北海道教育大学岩見沢校(北海道地区第1代表)と、総理大臣杯につづいて初のインカレ出場を決めた九州共立大学(九州地区第3代表)の一戦。

 日本の北に位置する北教大と、日本の南に位置する共立大。全国の舞台でしか、なかなか顔を合わすことのない、インカレらしい組み合わせとなった。先に試合を動かしたのは、インカレ初勝利を目指す共立大だった。立ち上がりは互角の展開を見せたが、8分に共立大が北教大GKのクリアミスをカット。すぐさま攻撃に移ると、右サイドを7番・木橋春暁がドリブル突破。ゴール前へとグラウンダーパスを送ると、これを14番・角康平が右足で合わせゴール。「この(悪い)ピッチコンディションの中、よくあのグラウンダーのボールをコントロールして決めてくれた」と指揮官の米山隆一監督も賞賛を寄せるゴールで、共立大が早い時間帯に先制に成功する。リードを許した北教大は、センターフォワードの14番・加藤大登が両サイドに流れるなど、前線の4選手が流動的なポジショニングをとり、共立大DFを撹乱。しかしチャンスはつくるものの、フィニッシュを決めきることができず0-1で前半を折り返す。
 後半に入ると、同点に追いつきたい北教大が猛攻をみせる。サイドを起点にした人数をかけた攻撃は、前半の攻撃よりも勢いを増し、決定機も。しかし、勢いを増したのは共立大も同じだった。ボールを奪ったあとの縦に早い攻撃が見事にはまり、北教大ゴールに迫る。さらに共立大は北教大ゴール前でファールを誘い、フリーキックでもチャンスを獲得。両チーム激しい攻防を見せるも得点を奪えないまま迎えた試合終盤、追いつきたい北教大は積極的なロングボールから決定的なチャンスを作るが、共立大のGK1番・福永浩哉がファインセーブ。最後までゴールを許さなかった共立大が、試合序盤に奪ったゴールを守りきり0-1で勝利を収めた。
貴重なインカレ初ゴールが、そのままインカレ初勝利の決勝点となり2回戦へと駒を進めた共立大。2回戦の対戦相手は、夏の総理大臣杯、関東リーグ優勝と二冠を達成し、三冠を目指す明治大学。米田監督は「今日の守備は100点満点」としながらも、「後半はいい崩しができて、GKと1対1になるシーンもあったが決めきれなかった。ああいうチャンスを決めきれないと、強いチームにはやられてしまう」との課題も口にした。「押し込まれる時間帯が多いだろうが、ダブルボランチをもう少し前でプレーさせられたら」と次戦を想定しつつ、1回戦の勝利を勢いそのままに夏の王者に挑む。
 惜しくも敗れた北教大は、ネットを揺らすことなく1回戦敗退。4年生はこれで引退になるが、この悔しさを知る下級生選手たちが、またこのインカレの舞台に戻ってくることを期待したい。


○9年ぶりのインカレ出場となった法政大学(関東地区第5代表)と、四国地区代表として常連で、23年連続32回目の出場となる高知大学(四国地区第1代表)との一戦。

 高知大は序盤から7番・下園直輝と11番・元田龍矢の切れ味鋭いドリブルによるサイド攻撃と、10番・藤井勇大と12番・後藤寛太の長短を織り交ぜたパスによって攻撃を組み立てて、法大ゴールへと迫る。そのまま主導権を握りたい高知大だったが、予想外のアクシデントが起こる。前半16分、法大の26番・ディサロ燦シルヴァーノが裏へと抜け出し、ペナルティーエリア内でボールを受けようとしたところを、高知大の20番・山下裕司が倒してしまい退場に。高知大は残りの時間を10人で戦う苦境を強いられることとなった。このプレーで得たペナルティーキックのチャンスを、4番・柳沢拓希が右足で冷静に流し込み、法大が先制に成功する。「数的優位になったからといってそれで勝てるわけではない」(法大・長山一也監督)が、35分17番・武藤雄樹が右サイドを突破、カットインしてゴールを決め、リードを2点差に。「次に行けたのがよかった」(同監督)。
 後半に入っても、依然として法大に有利な時間が続く。51分には13番・青柳燎汰の右からのクロスを、9番・鈴木歩がダイビングヘッドで決め、スコアを3-0とする。反撃に出たい高知大は、8番・藤川真也に代え9番・山﨑一帆を投入し、攻撃にアクセントを加えようとする。対する法大も72分、来季からベガルタ仙台加入が内定している怪我明けの10番・永戸勝也を投入。するとその2分後の74分、10番・永戸のクロスを高知大DFがクリア。しかしそのこぼれ球を拾った22番・黒崎隼人が押し込み、4点目を挙げる。さらに4分後の78分、10番・永戸のコーナーキックのボールが16番・長倉颯に渡ると、26番・ディサロへとパスが通る。これを26番・ディサロが左足でしっかりと決め、5-0に。法大の攻撃は最後まで止まらず、90+2分、16番・長倉のシュートはバーに当たるが、そこを詰めていた11番・高田一輝がダメ押しの6点目を決めてタイムアップ。
 数的不利に陥った高知大は意地を見せることができずに、悔しい初戦敗退となった。一方、6発快勝で9年ぶりのインカレ初戦を飾った法大。「リーグ戦の前期は4年生を中心とした守備のチームで最少失点の一方、点の取れないチームだった」が、後期は逆に「点は取れるようになったが守備がよくなかった」(長山監督)という。今は「球際と距離感のバランスがよくなった」と長山監督はチームの成長を評価した。2回戦の対戦相手は、優勝経験もある大阪体育大学。FC東京への加入が内定しているDFの2番・山田将之は「大体大には青森山田高時代のチームメイトもいる。同級生の6番・池上丈二のセットプレーは相手の武器なので集中を切らさないようにしたい」と快勝にも気を緩めず、次戦を見据えた。



@味の素フィールド西が丘

○北信越第2代表とのプレーオフを勝ち抜き、2年ぶり5度目の専修大学(関東第7代表・プレーオフ枠)と、九州地区第2代表で13年ぶり3度目の出場となる日本文理大学(九州地区第2代表)との一戦。

 試合は、前半開始から専大が主導権を握った。専大は11番・佐藤遵樹、27番・中山克広を中心にドリブルで攻め上がるが、文理大も4番・西村大吾を中心として守りを固め、なかなかシュートまで持ちこめない。それでも次第に専大が押し込み始めた38分、左から持ち込んだ27番・中山のグラウンダーのクロスに4番・柳育崇が飛び込み、左足で合わせて専大が先制する。しかし前半は専大リードで終わると思われた終了間際の45分、文理大7番・吉田旭陽からのパスを受けた11番・中山佑樹がそのままゴール前にボールを送り、最後は24番・上山俊介が決めて、文理大が同点に追いつく。
 同点には追いつかれたものの、後半も変わらずに専大ペースとなった。14番・岡本勇輝と8番・野田卓宏のダブルボランチがゲームを組み立てゴールに迫ると、58分には専大2番・飯田貴敬からの浮き球を4番・柳が、この日2点目となるゴールを決め、再び文理大からリードを奪う。その後、4番・柳はセンターバックにポジションを変ええるが、77分にはその4番・柳のオウンゴールにより再び同点となってしまう。だが延長も見えてきた88分にこの接戦に終止符が打たれた。専大2番・飯田のパスを11番・佐藤が浮き球でゴール前に上げると、途中出場のルーキー、23番・岸晃司がヘディングで押し込み専大が3点目をマーク。これが決勝点となり、3-2と勝ち越した専大が、2回戦へと駒を進めた。


○5年ぶり11度目の静岡産業大学(東海地区第1代表)と4年連続4度目の出場ながらインカレでは未勝利のIPU・環太平洋大学(中国地区第1代表)との一戦。

 両チームとも堅い立ち上がりで迎えたこの試合。静産大は6番・朝香竜悟、5番・諏訪部徹を中心に、また環太大は5番・利田将人、3番・安田拓馬の両DFが体を張って相手の攻撃を防ぎ、なかなかチャンスが生まれない。結局、前半は0-0のスコアレスドローで折り返して迎えた後半。静産大はハーフタイムに19番・佐藤啓太朗に変え13番・小寺将意を投入し、少しずつペースを握りはじめる。すると69分、8番・名和太陽の浮き球を受けた21番・栗田マークがヘディングで繋ぎ、最後は17番・藤田脩人の左足でシュートを放ち、静産大が先制する。静産大に傾いた流れを変えたい環太大は71分、10番・片田拓に変え30番・柴本慎也を投入。しかし静産大の勢いは止まらない。80分には10番・斉藤要が途中出場の13番・小寺将意にボールを預けると、再び受けたパスを冷静にコントロールすると、右足でゴールを決めて追加点。さらに87分には、4分前に投入された2番・櫻井豪流のパスをハーフェーライン近くで受けた21番・栗田が目の覚めるようなドリブルで突破。そのままゴールに持ち込み持ち込みシュートを放つ。静産大はこのゴールでスコアを3-0とし、試合を決定づける。一方の環太大はゴール前までボールを持ち込むもシュートまで持ち込めず、結局無得点のまま試合終了。インカレの舞台での初ゴール・初勝利は、次年度以降への持ち越しとなった。
 後半、鮮やかな攻撃を見せた静産大は、2回戦で関東第3代表の日本体育大と対戦。日体大を率いる鈴木政一監督は、静産大の提携先であるジュビロ磐田の元監督でもあり、縁のあるチームだ。日体大は35年ぶりの出場となるだけに初戦の緊張感も予想される。すでに初戦を勝ち抜いている利を活かしたいところだ。


@江東区夢の島競技場

○プレーオフで岩手大学に勝利し、6年連続41回目の出場となる札幌大学(北海道地区第2代表)と、2年連続38回目の出場となる中京大学(東海地区第2代表)というインカレ常連校同士の一戦。

 中京大学のキックオフで始まったこの試合は、両チームとも慎重な立ち上がりに。お互いにボールを保持できず、攻守が激しく切り替わる、目まぐるしいゲーム展開となった。その中でも札大はなかなかペースを掴めないながらも、主将6番・池田一起のハードワークからボールを保持し、中京大のミスから攻撃を仕掛けようと試みる。しかし、中京大も主将の5番・西村佳祐を中心とした堅固なディフェンス陣がゴールを許さない。どちらも決め手を欠く中、均衡を破ったのは中京大だった。45分、相手のパスをカットした6番・江口諒からのボールを受けた20番・坂本広大が、左足でシュートを突き刺す。中京大が待望の先制点を挙げ、1-0のリードで前半を折り返す。
 後半に入ると、中京大が前半の勢いのままに攻勢に出る。まずは48分に19番・岡田匠馬が、さらに49分にはこの日2点目となる20番・坂本のゴールで3-0と点差を広げ、一気に流れを引き寄せた。その後も中京大は攻め続け、81分には途中出場の13番・岩田考弘がダメ押しのゴールを決め、勝負あり。4-0で中京大が勝利を収めた。
 プレーオフを勝ち抜きインカレに挑んだ札大だったが、本来の実力を出し切れず、無念の敗戦。一方の中京大は、前半こそミスが目立ったものの、しっかりと立て直してその実力の差を見せつけ、2回戦進出を果たした。初戦で4発快勝という勝負強さと勢いで、次は関東地区第2代表の筑波大学に挑む。


○3年ぶり22回目の出場となる関西大学(関西地区第4代表)と、2年ぶり3回目の出場の東海学園大学(東海地区第3代表)一戦。

 前半から互いに様子を伺うような立ち上がりとなった。関西大は10番・清永丈瑠や17番・竹下玲王を軸としてボールを保持しながら東園大ゴールに迫る。一方の東園大も14番・武田拓真や18番・渡辺柊斗を中心に、堅い守備からのカウンター攻撃で決定機を作り出すが、関西大GK1番・前川黛也のファインセーブに阻まれて得点には至らない。
 後半に入ると次第に関西大のポゼッションが安定しなくなり、東園大が試合の主導権を握り始めた。そんな中52分、東園大10番・畑潤基が中央での混戦から抜け出して右足を振り抜き、東園大が待望の先制点を得る。リードを許した関西大は試合の流れを引き戻すため、23番・平尾柊人と28番・藤村洋太ら攻撃的な選手を投入。すると71分、左サイドから23番・平尾が上げたクロスを28番・藤村が折り返し、17番・竹下が頭で押し込んで同点ゴール。関西大の途中出場の2人が得点に絡んで試合を振り出しに戻した。その後は一進一退の攻防が続いたが、このまま延長戦に突入するかと思われた後半アディショナルタイムに勝負が決した。関西大17番・竹下がゴール前での相手のクリアミスを見逃さずに頭で押し込み、劇的な逆転ゴールを挙げて試合を決めた。
 この試合に勝利した関西大は2回戦で九州地区第1代表の鹿屋体育大学と対戦。8年連続の出場となる九州王者を相手に、初戦で見せた粘り強さで久しぶりのインカレで上位進出を目指したい。


@ゼットエーオリプリスタジアム

○プレーオフを勝ち抜き、念願のインカレ初出場となった四国学院大学(四国地区第2代表・プレーオフ枠)と、3年連続の出場でまずはしっかり初戦を突破したい慶應義塾大学との一戦。

 試合開始から流れをつかんだのは慶大だった。前半9分、左コーナーキックからのボールを、主将で名古屋グランパスへの加入が内定している4番・宮地元貴の頭で合わせ、慶大が幸先よく先制点を得る。17分には7番・渡辺夏彦が、持ち味を生かした独特のドリブルで前線にボールを運び、最後は自らの右足で追加点を挙げる。さらに40分には11番・手塚朋克が、またしても7番・渡辺のドリブルからのアシストを受け、冷静に右足で合わせ3点目。2点差のうちに追いつきたい四学大であったが、結果的には前半だけで3点ものリードを突き付けられる苦しい展開となった。
 後半はハーフタイムに2人の選手を交代した四学大が流れをつかむ。果敢にゴール前にボールを送り、ゴールを目指す四学大だったが、86分には、途中交代でピッチに送り込まれた慶大18番・矢野峻寛が相手GKのこぼれ球を押し込み、ダメ押しの4点目で0-4に。後半は相手にボールを持たれる時間帯の長かった慶大だが、しっかりと無失点で抑え、4点のリード守り切って快勝を収めた。
2回戦は、同じく関東から出場の順天堂大学との対戦。関東リーグでは2勝している相性のいい相手だ。昨年度大会では2回戦敗退を喫しているだけに、全国の舞台での「一戦必勝」を掲げ、2回戦突破を狙う。


○16年連続出場となる仙台大学(東北地区第1代表)と、21年ぶり2回目の出場となる金沢星稜大学(北信越第1代表)との、対称的な大学同士の一戦。

 試合は、序盤から仙台大10番・山田満夫を中心とする組織的なパスワークから、仙台大がリズムをつかむ。すると15分、GK1番・山崎裕貴からのロングボールを9番・川島章示が頭でそらし、14番・宮澤弘がワンタッチで技ありのループシュートを決めて、仙台大が先制に成功する。しかし前半だけでシュート数9と仙台大が終始ペースを握り続けるものの追加点はなく、1-0で前半は終了。
 後半に入り動きが変わったのは星稜大。49分、相手DFの裏のスペースに抜けた星稜大の選手が倒され、ペナルティーキックを獲得。このチャンスを9番・西原樹が落ち着いて決め、試合を振り出しに戻す。その後は遅攻で組織的に攻める仙台大と、カウンターを繰り広げる星稜大の一歩も譲らぬ展開が続く。すると75分、コーナーキックから仙台大3番・川口大翔がヘディングでシュートしたボールは、一度はGKに阻まれる。しかしこのこぼれ球を見逃さなかった14番・宮澤が、この試合2点目となる勝ち越しゴール決めて、勝敗は決した。
 仙台大の昨年度のインカレ初戦も同じゼットエーオリプリスタジアム。しかし結果は2-0からの逆転負け(vs中京大2●3)という苦い敗戦を喫した。今大会は、一度追いつかれてからも慌てず、その悔しさを胸にチーム一丸となって勝利をつかんだ。2回戦の対戦相手は阪南大学。関西王者を相手に、仙台大が全国の舞台で躍進を目指す。



 1回戦を勝ち抜いた8チームは、2回戦からはシード校として登場する関東、関西、九州の各上位校と対戦する。試合はすべて12月10日(土)に行われ、町田市立陸上競技場では法政大学と関西地区第2代表の大阪体育大学、総理大臣杯優勝/関東地区第1代表の明治大学と九州共立大学の2試合が開催。大和スポーツセンター競技場にて関西地区第2代表の関西学院大学と専修大学、静岡産業大学と関東地区第3代表日本体育大学の2試合が行われる。また夢の島競技場にて関西大学と九州地区第1代表の鹿屋体育大学、関東地区第2代表の筑波大学と中京大学が対戦。味の素フィールド西が丘では関東地区第4代表の順天堂大学と慶應義塾大学、仙台大学と関西地区第1代表の阪南大学の2試合が行われる。
 各地域の強豪が出揃い、さらに白熱した試合が繰り広げられる2回戦。一発勝負のトーナメントを勝ち抜き、大学サッカーの頂点を掴むのはどのチームか。