JUFA 全日本大学サッカー連盟

全日本大学選抜
『第30回ユニバーシアード競技大会(2019/ナポリ)』決勝戦(vsブラジル)マッチレポート(監督、選手コメント)
2019/07/15


 これがユニバーシアード競技大会で最後のサッカーの試合となる決勝戦。日本が前回・台北大会に続く二連覇、そして7回目の優勝をかけて戦う相手はブラジルとなった。本大会での通算成績は3戦3勝と相性はよく、奇しくも大会前にはトレーニングマッチを行い、3-0で快勝を収めた相手だ。が「あのときと今のブラジルは違うチーム」と、監督も選手も口を揃える。


 「ブラジルはターンオーバーを使わず、この試合が5戦目の選手もいる。あまり動けない選手もいると思った」。松本直也監督の予想どおり、ブラジルは5バック気味の守備的な布陣で試合に臨んできた。中央突破は難しいと見た日本は、武器であるサイドからの崩しで先手を取るべく試合に入った。中村帆高、山原怜音のサイドバックが積極的に攻め上がり、三笘薫、紺野和也の両サイドが1対1の勝負を仕掛けてはゴールを狙う。18分には三笘が50メートル近い距離をドリブルで独走。最後はブラジルDFにクリアーされるものの、そのドリブルと粘り強くボールを追うプレーに会場は大きく沸いた。また20分には、紺野とのワンツーで旗手怜央が抜け出し、ゴール前にクロスを上げる。これを上田綺世がダイビングヘッドで飛び込むものの、ボールはわずかに左に外れてゴールならず。その後はブラジルのゆっくりとしたボール回しにリズムを崩されながらも、日本は攻撃の手を緩めない。旗手、上田がたびたび決定機を迎えるが決めきれず、前半は無得点のまま終了した。


 スコアレスで迎えた後半だったが、試合は思いもかけない形で動いた。56分、中央からペルティエリアに切れ込んだ三笘が、ブラジルのDFに倒されてペナルティーキックを獲得する。キッカーに立ったのは三笘にキッカーを譲られた上田。「薫くんが蹴るつもりなら(キッカーに)立たなかった」と言うが、落ち着いてゴール右上に蹴り込んで先制点を挙げる。

 また三笘を倒したDFはこのファウルで2回目の警告を受けて退場となり、日本は数的に優位な立場で残り時間を戦うことになった。すると日本はプレスをかけながらしっかりとボールを回して中盤を圧倒。64分には三笘からのスルーパスに上田が反応。ワントラップしてペナルティエリア内に抜けると、左足を振り抜いて追加点を決める。さらに70分には、三笘のアウトサイドキックのパスを受けた旗手が、冷静にボールを収め、GKの股を抜くシュートで3点目を挙げる。


 3-0とリードを広げた日本だったが、78分にはフリーキックの流れからクリアボールを詰められ失点。しかし3-1から追いつかれた準決勝・イタリア戦の教訓を得て、即座に守備の立て直しを図るとブラジルの反撃をシャットアウト。逆に82分には山本選手のクロスに抜け出した上田が、自身のハットトリックとなる鮮やかなゴールを決めて4-1に。再びブラジルを突き放した。


 その後は、危なげない試合運びで守りきりタイムアップ。この瞬間、日本の二連覇、そして通算7回目の優勝が決まった。日本は最後のユニバーシアード競技大会の王者として金メダルを獲得し、有終の美を飾った。




松本直也監督


 ブラジルはターンオーバーせず、この試合が5試合目という選手も数人いましたので、あまり動けないだろうな、とは想定していました。予想どおり5バック気味で守備を固めてきたので、ポイントはサイドを攻略し、いかにディフェンスラインの背後をとるか。前半はブラジルのしたたかさに苦しみましたが、1点を取れば流れがくる。そう思って、選手には焦れずにしっかりとボールを動かすよう伝えました。
 この優勝は、大学サッカー関係者すべての力でなし得た優勝だと思っています。今の4年生たちは、1年のころから海外遠征を経験し、トゥーロン国際大会やコパ・アメリカに参加するような選手も出てきました。自分が見た過去のユニバーシアード代表と比べてみてもトップレベルの選手がそろった、非常にまとまりのあるチームだったと思います。彼らにはこの大会を通過点として東京オリンピック、そしていずれは日本代表に選ばれるような選手になることを願っています。


上田綺世(FW・3年・法政大学)



 前半はうまくいかない時間帯もあったのですが、自分としては相手のディフェンスラインがバラバラだということが気になっていました。ハーフタイムにはその点を話し合い、修正するべきところを修正しました。チームとしてはサイドからの攻撃を中心としていたのですが、僕としては横パスから不意打ちを狙う形もしたいと伝えました。3点目のゴールは、その狙いどおり。ボランチの2人に「ワンタッチで、横パスをつけてほしい」と伝えたとおりの、タイミングもばっちりのゴールだったと思います。
 2点目については、いつもどおりといえばいつもどおり。僕は常に(三笘)薫くんがドリブルをしている姿を思い浮かべながら、どう走るか、どう背後をとるかを考えているのですが、その選択肢のひとつが、互いに合ったタイミングでのゴールでした。結局、僕がやっている仕事は最後の1割でしかない。それを組み立ててきた9割の部分があって、結果が出せていると思います。今日のゴールについては、僕だけではない、パサーの良さが出たゴールだと思っています。


旗手怜央(FW・4年・順天堂大学)



 ブラジルは5バックで引いてきたので、前半はなかなかチャンスがなくて苦しみました。けれど後半、(三笘)薫が飛び出して、相手がひとり退場してからは自分たちのサッカーができたと思います。ゴールシーンについては、薫がアウトサイドからパスを出してくるというのはわかっていたので、あとはどうトラップしてシュートするか。自分の技術が試されるゴールでした。うまく決められてよかった。
 ブラジルが決勝トーナメントに残ったという時点で、なんとなく決勝で対戦するような予感はありました。トゥーロン国際大会では敗れていたので勝ててよかった。ひとり退場したにせよ、これだけの大差をつけて勝てたのは、みんなで積み上げてきたことが出せたからだと思っています。個性豊かなチームで、主将としてまとめるのは大変でしたが、副将の阿部航斗をはじめ多くの人の支えがあって自分なりにチームをまとめることができました。支えてくれた人に感謝したいです。


三笘薫(MF・4年・筑波大学)



 相手が5バックの引き気味できたので、前半から自分と紺野選手のサイドを起点として積極的に仕掛けようと考えていました。PKをとったシーンは、左サイドバックの(山原)怜音が外に開いたので中に入ったところ、FWの(旗手)怜央もサイドに開いてくれた。前にスペースができたので、そこを狙おうという意識はありました。アシストの部分では、自分の特長であるスルーパスやアウトサイドからのパスという部分を出せたと思うのですが、最後のところを決めきれていないので、そこはこだわっていきたい。
 決勝戦はトゥーロン国際大会で敗れたブラジルが相手だったので、絶対に勝ってやろうという気持ちはありました。リベンジを果たせてよかったです。今後は年代別の代表に入り、東京オリンピックに出場することが目標となりますが、まだまだ候補メンバーとしては下のほうだと思っています。もっと成長し、大きなプレーヤーとなってオリンピックにも関わっていきたいと思います。