ベスト8が出揃った『2025年度 第49回 総理大臣杯 全日本大学サッカートーナメント』。9月7日に行われた準々決勝では、関東同士の対戦が2カード、関西同士の対戦が1カードと同地域対決が相次いだ。
関東・関西のチーム以外で唯一の生き残りとなった新潟医療福祉大学は、関西大に2度追いついて延長戦に突入。しかし延長戦開始直後に痛恨の失点を喫し敗戦。昨年度準優勝校にして昨年度インカレ準優勝チームの新医大は準々決勝で姿を消すこととなった。残る3試合はそれぞれ関東、関西勢同士の対戦に。関西対決では、先制した関西学院大学が同点に追いついた京都産業大学を2分後に突き放して勝利。関西予選で敗れた雪辱を果たした。一方、関東対決では東洋大学が2点を先取し中央大学に勝利。また駒澤大学と日本大学の試合では駒大が立て続けに2点を先取。日大に1点を返されるものの、さらに2点を追加して突き放し、2部チームが1部チームに勝利する下克上を起こしている。
関東・関西以外の地域で唯一残っていた新医大が敗れたことにより、ベスト4に残ったのは関東と関西がそれぞれ2チームとなった。奇しくも準決勝では関東同士、関西同士が戦うこととなり、準決勝の結果がどうなったとしても決勝は"東西対決"となることに。9月10日(水)に行われる準決勝は、第1試合が駒大と東洋大の"1部2部対決"。今季リーグ戦での対戦はないが、関東予選の4回戦ではスコアレスドローのままPK戦に勝利した東洋大が準々決勝に駒を進めた。駒大にとっては雪辱の相手だが、勝った東洋大も退場者を出すなど苦い勝利となっただけに、この再戦できっちり勝ちたいところだろう。第2試合の関西対決は伝統の"関関戦"に。今季リーグ戦では関学大が3-1で勝利しているが、前期終了時点での順位は関西大が首位。関学大はわずかに勝点差で2位に甘んじている。実力伯仲のライバルが決勝進出を懸けて全国大会の舞台で激突。熱い試合にならないわけがない。
準々決勝 全結果・トーナメント表
マッチレポート
日本大学 1(1-3)4 駒澤大学
@セイホクパーク石巻フットボール場
"関東対決"は2カード。関東地区第7代表の日本大学は、同地区第10代表の駒澤大学と対戦。この試合は1部・日大と2部・駒大の1部2部対決となったが、先手を取ったのは2部の駒大だった。序盤の11分、駒大は亀井大和のスローインを起点に渡邉幸汰が頭でそらし、今井拓人が相手DFをかわしてマイナスのパス。最後は後藤康介が合わせて先制する。駒大はその4分後にも、髙橋修斗の右コーナーキックを三浦翔遼人が頭で押し込んで追加点。立て続けのゴールで駒大が0-2とリードする。対する日大も5分後の20分、矢越幹都の右コーナーキックを平尾勇人が頭でつなぎ、それを白濵聡二郎が蹴り込んで1点を返すが、駒大は39分に素早いパス回しでチャンスを作ると、ゴール前に走り込んできた新垣陽盛が右足を振り抜いて3点目。再びリードを2点差に広げて前半を終了した。
後半も先に動いたのは駒大だった。60分、右サイドでボールを奪った明石梓希が前線にロングボールを放つと今井がこれに反応。ボールをキープしそのままペナルティーエリア内に切れ込みすかさずパス。渡邉が豪快に蹴り込んで試合を決定づける4点目。日大も77分、村上樹、小林健、五木田季晋の3人を一気に投入するなどして反撃を試みるが、追加点を挙げることはできず1-4で試合終了。2部の駒大が1部の日大を下し、2022年以来となる準決勝進出を決めた。
中央大学 1(0-0)2 東洋大学
@遠野運動公園 陸上競技場
関東対決のもう1カードは1部チーム同士の対戦となった。関東地区第5代表・中央大学と同地区第2代表・東洋大学の今季リーグ戦の対戦は東洋大が1-0で中大に勝利している。この試合でも先に主導権を握ったのは東洋大だったが、次第に中大もチャンスを作るなど前半は一進一退の攻防戦に。「相手を見ながらの攻撃になっていたので少し固い入りになっていたのかもしれない」(東洋大・井上卓也監督)。スコアが動いたのは後半開始直後の47分。東洋大は鍋島暖歩の最終ラインからのロングパスに、右サイドバックの荒井涼が反応。ゴール前に入れたクロスに、ルーキー・香取武が頭で合わせて先制点を挙げる。「狙いとしていたサイドからの攻撃で、今日スタートから使った1年生FWが点を獲ったといことは、チームにとってすごくいい方向に向かう1点目だったと思う」(同監督)。ビハインドを負った中大は57分に淵上涼太と新鉄兵を投入。62分には尾川丈、65分に倉上忍、67分に横山俊介と次々とフレッシュな選手をピッチに送り出して試合の流れを引き寄せようとする。だが東洋大は70分、中大DFのクリアボールを拾った鍋島が、ペナルティーエリアの外から鮮やかなコントロールショットをゴールに突き刺して追加点。0-2とリードを広げた。対する中大も最後まで粘り強く攻め続け、アディショナルタイムの90+2分、新のパスに抜け出した長田叶羽が決めて1点を返すが時すでに遅し。ほどなくしてタイムアップの笛が鳴り、中大は3大会前と同様準々決勝の壁を破ることができなかった。勝利した東洋大は、準優勝の2021年大会以来4大会ぶりとなる準決勝進出を果たした。
関西大学 3(1EX0)2 新潟医療福祉大学
@遠野運動公園 陸上競技場
準々決勝4試合中、唯一の他地域対決となったのが関西地区第4代表・関西大学と北信越地区第1代表・新潟医療福祉大学の試合だ。2回戦では関東地区代表を破っての準々決勝進出となった両チームだが、前半はともに慎重なすべり出しに。関西大がやや優勢に試合を進めるも、決定機を作れないまま0-0で試合を折り返した。
関西大は後半の頭から黒沢偲道を投入。60分には2回戦で先制点を挙げた淺田彗潤と、堀颯汰のふたりを同時にピッチへと送り出す。この関西大の早めの交代が停滞した状況を打破する。63分、関西大は右サイドから攻撃を仕掛けると、桑原航太のクロスに交代したばかりの堀が合わせるがこれは相手DFがブロック。しかし堀は粘り強くボールをキープし、上がってきた淺田にパスを送る。淺田のシュートはGKが反応するも、キャッチしきれずこぼれたボールを黒沢が蹴り込んでゴールを揺らす。後半から出場の3人が得点に絡み、関西大が待望の先制点を挙げた。だが新医大もその5分後の68分、細井響がペナルティーエリア外から放ったシュートが、相手DFに当たってコースを変えてGKの頭上を越えてゴールへ。新医大がラッキーなゴールで同点に追いついた。しかし関西大の勢いは衰えず79分、今度は左から仕掛けると藤井龍也、黒沢、淺田とつないで最後は真田蓮司が体勢を崩しながらもシュート。真田の2試合連続ゴールで関西大が再び勝ち越す。このまま関西大が逃げ切るかと思われたが、新医大も最後まで粘る。アディショナルタイムの90+5分、白石蓮の右コーナーキックをこちらも交代出場の漆舘拳大が頭で合わせて追加点。土壇場で新医大が再び追いつき、試合は延長戦へと突入した。
シーソーゲームの相を呈してきた試合は、しかし延長前半開始早々に決着がつく。開始わずか1分、延長戦から交代出場となった藤谷温大が左サイドを一気にオーバーラップ。そのままペナルティーエリアにカットインしてシュートを放つ。これは新医大GKが弾いたものの、こぼれ球を拾った宮川大輝がワントラップから強烈な左足ボレーをゴールに突き刺す。みたびのリードを得た関西大はその後、堅固な守備で新医大の攻撃を防ぎ3-2で試合終了。決勝点を挙げた宮川も83分から出場した交代選手。3点すべてに途中出場の選手が絡むなど交代起用が見事に的中し、関西大が2019年以来5大会ぶり、舞台を東北に移してからは初となるベスト4入りを決めた。
関西学院大学 2(1-0)1 京都産業大学
@セイホクパーク石巻フットボール場
関西地区第6代表・関西学院大学は同第2代表・京都産業大学と"関西対決"。今季は2回の対戦があった両チーム。リーグ戦ではスコアレスドローながら、総理大臣杯の地域予選では京産大が2-0で関学大を下している。しかし3度目の対戦となるこの試合で、先制点を挙げたのは関学大だった。17分、山本楓大が入れた右巻きのパスに内田康介が走り込んでシュート。ボールはバーに当たったものの、そのまま内側に落ちてゴールイン。ビハインドを負った京産大は、後半の頭から山村朔冬、高川諒希のふたりを投入。58分に滝口晴斗、64分には末谷誓梧をピッチに送り出して攻撃のギアを上げる。すると65分、左サイドから上がったサイドチェンジのロングパスを滝口がキープ。ゴール前に入れると、これを高川諒希が頭で合わせて京産大が同点に追いついた。振り出しに戻ったかのように思われた試合だったが、その2分後にまたもやスコアが動く。関学大は右サイドからのロングパスに三宅凌太郎が反応。トラップしたボールは相手DFにクリアされるものの、こぼれ球を拾った小西春輝がペナルティーエリア外から地を這うようなバウンドシュートを叩き込んで勝ち越し点。2回戦で2得点を挙げた小西の2試合連続ゴールで、関学大が再び京産大からリードを奪う。京産大はその後も積極的な攻撃で関学大ゴールに襲いかかるが、関学大も冷静な対応でこれを防ぎきり2-1でフィニッシュ。関学大が地域予選の雪辱を果たし、2大会ぶりとなるベスト4入りを決めた。