ついに残り4チームとなった『2025年度 第49回 総理大臣杯 全日本大学サッカートーナメント』。準決勝では、ベスト4に残った関東2チーム、関西2チームがそれぞれ同地区で対戦することとなった。
関東対決と関西対決、どちらも今季に対戦経験のあるカードとなったが、奇しくも両チームとも前回の対決と同じ結果となった。関東地区予選ではスコアレスドローのうえPK戦にもつれこんだ駒澤大学と東洋大学の試合は、駒大が先制するも終了間際に東洋大がペナルティーキックで追いついて延長戦、PK戦へ。PK戦では駒大がひとり失敗したことで、全員が成功させた東洋大が、昨年度インカレに続き2大会連続で決勝進出を果たした。
一方"関関戦"となった関西対決は、終了間際の関西大が追いついて1-1に。延長戦突入かと思われたが、アディショナルタイムの90+3分に関学大が勝ち越しゴールを決めて1-2に。終了間際にスコアが動く劇的な展開で関学大が2年ぶりに決勝へと駒を進めた。
決勝戦は東洋大と関学大の"東西対決"となった。東洋大は2021年大会以来2回目の決勝進出となり、勝てば初優勝。また昨年度のインカレに続く"全国大会2連覇"となる。一方の関学大は2023年大会以来3回目の決勝進出。勝てば2015年以来9大会ぶり2回目の優勝。全国大会の決勝では初の顔合わせとなる。栄冠に輝くのは天皇杯でJ1クラブに2連勝し、一気に名を挙げた東洋大か、はたまた関西リーグ優勝31回、総理大臣杯、インカレともに優勝経験のある関西の雄・関学大か。決勝は9月13日(土)13:00、キューアンドエースタジアムみやぎで開催される。
準決勝 全結果・トーナメント表
マッチレポート
駒澤大学 1(1-0/0-1/0-0/0-0/4PK5)1 東洋大学
@セイホクパーク石巻フットボール場
関東勢対決は、関東地区第10代表と同2位の東洋大学の対戦となった。関東地区予選である『「アミノバイタル®」カップ2025 第14回関東大学サッカートーナメント大会』の4回戦では、スコアレスドローでPK戦に突入し東洋大が勝利。駒大にとっては雪辱を果たす絶好のチャンスとなった。試合は、立ち上がりから東洋大が主導権を握りながらも攻めあぐねる展開に。対する駒大も防戦一方というわけではなく、ボールを奪ってからの素早い攻撃でチャンスを作る。ただどちらも決めきれず、東洋大は32分に宮永羚進が怪我で交代を余儀なくされるトラブルも。スコアレスで折り返すかと思われた前半終了間際の43分にスコアが動いた。駒大は最終ラインの三浦翔遼人ボールを奪うと、今井拓人と渡邉幸汰のコンビネーションプレーで一気に前線へ。左に展開したボールを糸賀大翼がゴール前に入れ、それを今井が左足で流し込みゴールネットを揺らす。「ボールを回されながらでも、こうやれば自分たちは点が取れるということを選手たちがわかってきた」(駒大・秋田浩一監督)という駒大が、"らしい"形で先制点を挙げた。
1点を追う東洋大は58分に髙橋愛翔と鍋島暖歩を投入して巻き返しを図るが、駒大の粘り強い守りを崩し切るまでにはいたらない。東洋大は81分「ジョーカー的な」(東洋大・井上卓也監督)活躍を期待して依田悠希を投入。するとこの期待に応えて依田が相手の裏をとって左サイドを突破。そのままペナルティーエリア内に侵入したところを倒されてペナルティーキックを獲得する。「そのまま抜けきっていれば1対という状況。彼の良さが最大限出せた」(同監督)。キッカーは、天皇杯でJ1相手に連続ゴールを決めた湯之前匡央。終了間際の90+1分、ゴール真ん中に蹴り込んで試合を振り出しに戻した。
試合は1-1のまま延長戦に突入。駒大は、東洋大・依田にペナルティーキックを与えたプレーが2枚目の警告となり、DF・坂田陸が退場に。ひとり少ない状態で延長戦を戦うこととなった。それでも東洋大の猛攻をしのぎきり、両チーム追加点のないまま勝敗はPK戦に委ねられた。PK戦では駒大の2人目・亀井大和のシュートがバーを叩き失敗。対する東洋大は全員が成功させ、PK戦4-5で東洋大が2021年大会以来2度目となる決勝進出を果たした。
奇しくも関東地区予選の時と同じ、PK戦にまでもつれこんだこのカード。東洋大の井上監督は「あの時もなかなか点が入らず、0-0で延長PKになった。駒大は90分、100分、110分間、ずっと自分たちのサッカーを徹底できるチーム。だからこそ相手の特徴をできるだけ出さないようにというプランだったが、自分たちが攻めながらカウンターで失点というのは、まさに相手の狙っていた形だったと思う」と苦言を呈す。それでも「ある程度アレンジをしながらも対応できたし、少しずつ違う個性でチームにいいエッセンスを加える選手たちも出てきた」と選手層が厚くなってきたことに手応えを感じている様子だった。決勝進出は2回目となるが「コロナ禍の特別な大会だったのでメンバーのやりくりにも苦労した。それでも決勝で先制できたが総合力的には相手のほうが強かった」と逆転負けを喫した。今大会は、昨年度のインカレに続く初優勝を狙うが「全国大会ではよく"打倒関東"と言われるので、関東代表として頑張るのはもちろんだが、関東相手でも関西相手でも勝ち抜けるチームになってほしい」とチームに檄を飛ばした。
関西大学 1(0-0)2 関西学院大学
セイホクパーク石巻フットボール場
準決勝のもう1試合、関西対決は伝統の"関関戦"となった。関西地区第4代表の関西大学と同第6代表・関西学院大学の試合は後半にスコアが動いた。後半開始早々の47分、関学大は中盤で相手からボールを奪うと先田颯成が小西春輝にパス。小西はそのままペナルティーエリアに侵入してシュートを放つが、これは関西大GK・生嶋健太郎がブロック。こぼれたボールを詰めていた先田が頭で押し込むが、これも関西大DFに跳ね返されてしまう。だがそのクリアボールを酒井柊維が拾い相手を引き付けて横パスを出す。最後は米田和真が左足を振り抜いてゴール。関学大が粘り強い波状攻撃で先制点を挙げる。対する関西大は55分に藤井龍也を投入。サイドからの攻撃を強化すると、真田蓮司、黒沢偲道らを中心に積極的に攻撃を仕掛けるが、なかなか関学大のゴールを割ることができない。このまま関学大が逃げ切るかと思われたが、86分、関西大は兎澤玲大のパスを受けた桑原航太がゴール前にクロスを上げ、真田が頭で合わせるがGKがこれを防ぐ。すると黒沢がこぼれ球を拾いシュートを放つが、こちらもDFがブロック。だがそのボールをすかさず三木仁太が蹴り込んでネットを揺らす。試合の最終盤に関西大が追いつき、この試合も延長戦に突入かと思われた。
だが、最後の最後に劇的な展開が待っていた。アディショナルタイムに突入した90+3分、関学大は最終ラインでボールを奪い攻撃を組み立てると、途中出場の棟近禎規がセンターサークル手前からのロングパスを前線に入れる。これに反応したのが、やはり途中出場の山本吟侍。「あの形は何度も練習でやっていた」という阿吽の呼吸でボールを収めるとフリーの状態で一気にゴール前へ。ボックス内で追いついた相手DFを切り返してかわすと、狙い済ましたシュートを放ち追加点。その直後に試合終了のホイッスルが鳴り、関学大が山本の劇的な勝ち越しゴールで勝利。"関関戦"に連勝し、2大会ぶりの決勝進出を決めた。
関学大の早崎義晃監督は「延長戦に入ると流れ的には自分たちが厳しくなると思っていた。それだけに、最後のワンチャンスを決めきってくれたので助かった」と安堵の表情。決勝点を決めた山本吟侍については「失点する前にやられているのでそこはちょっと」と言いながらも「いちばん大事な仕事をしてくれた。得点を獲る力はある選手。最後にそれを発揮してくれた」と評価した。全国大会での"関関戦"は「記憶にない」というが「いい相手と、全国の舞台でこういうゲームできたので自信になったと思う。ただ、最後に勝ち切って終われるのかどうかが問われるところ」と気を引き締める。2年前、濃野公人(鹿島)、美藤倫(G大阪)、倍井謙(磐田)、長尾優斗(水戸)らを擁した関学大は、決勝の大舞台に立ちながらも富士大に敗れた。2年前、そのピッチに立っていた古田東也や山本楓大、小西にとっては忘れられない悔しい思い出だろう。その経験を糧に「まずは決勝までの2日間の準備が大切」と早崎監督。「対戦相手の分析はもちろんのこと、自分たちが何をどうすべきか、しっかり理解した上で戦いきりたい」。
3位表彰
駒澤大学
関西大学