JUFA 全日本大学サッカー連盟

全日本大学選抜
『第30回ユニバーシアード競技大会(2019/ナポリ)』準決勝戦(vsイタリア)マッチレポート(監督、選手コメント)
2019/07/13

 7度目の優勝を目指すユニバーシアード日本代表の前に立ちふさがったのは、ライバル・イタリア。過去、ユニバーシアード競技大会では日本と7度対戦し、これまでの戦績は3勝4敗。特筆すべきは、その3勝のうち2勝は決勝での対戦ということだ。イタリアにとって日本は目前まで見えていた優勝を阻む相手ということになる。逆に、4敗のうち3敗は準決勝または準々決勝と“決勝以外”試合に集中しており、日本にとってもイタリアは倒さなければ決勝に進めない相手、ということになる。



 そんな因縁めいた相手との8度目の対戦は、サッカー競技“最後のユニバーシアード競技大会”の準決勝戦。これまでの例からして勝率が低く、しかもイタリアは開催国と、日本にとっては不利な条件が連なる状況でキックオフを迎えた。だが、試合は立ち上がりから日本が主導権を握る展開に。日本は金子拓郎、小柏剛らが中心となって果敢にイタリアゴールに攻め込むが、イタリアの固い守備を崩しきることができない。逆に24分には、パスミスからイタリアにCKを献上。その流れから、オウンゴールで今大会初の先制点を許してしまう。

 しかし日本は、すぐさま逆襲に出る。28分、金子拓からのパスを受けた小柏が左サイドからペナルティエリア内にカットイン。マイナスのパスをゴール前に送ると、これに児玉駿斗選手が滑り込むようにして右足をあわせる。「これまで滑り込んでゴールをした覚えはない。まったく自分らしくないゴール。けれど自分のパスミスが失点のきっかけになったので、絶対に点を取らないと、と思っていた」(児玉)。児玉の“汚名返上”のゴールが決まり、日本が同点に追いつく。


 その後は一進一退の攻防が続き、43分には小柏が強烈なミドルシュートを放つも、これは惜しくもバーの上。前半のアディショナルタイムには、イタリアのセットプレーが続くなどピンチを迎えるが、これはGKの阿部航斗がファインセーブで防ぎきり、前半は1-1のまま終了した。

 日本は前半同様、後半も主導権を握ってイタリアゴールに迫る。すると58分、明本考浩のロングフィードに小柏が反応。相手DFを抜き去ると、GKとの1対1を制してシュートをゴール右隅に流し込む。小柏の2試合連続となるゴールで、日本は逆転に成功。さらにその4分後の62分には、明本のパスを受けた金子が、鮮やかなミドルシュートを決めて3-1とイタリアを突き放す。

 リードを2点に広げた日本は68分、金子を下げて中村帆高を投入。右サイドバックの山原怜音を一枚前に出す。また77分にはFWの林大地に代えて森下龍矢をピッチに送り出し、小柏をトップに挙げるなど、守備力の高い選手を入れて守りを固め始める。ところが、これが裏目に出た。79分にはフリーキックの展開からヘディングを決められて失点。3-2と追い上げられてしまう。



 1点差に詰め寄ったことでイタリアは息を吹き返し、スタンドの応援の声もひときわ大きくなった。日本の選手がボールをもてば強烈なブーイング、イタリアの選手には「イッタリア!」の大声援が鳴り響く中、日本は冷静に対応。39分には小柏、40分には森下が決定機を迎えるものの、いずれも枠を捉えきれず、なかなかイタリアを引き離すことができない。

 試合は日本が1点リードのままアディショナルタイムに突入。すると終了間際の90+4分、中村帆高選手がペナルティエリア内でハンドのファウルをとられ、イタリアにPKを献上。イタリアはこのPKをきっちり決め、ついに日本は同点に追いつかれてしまう。ほどなく終了のホイッスルがなり90分が終了。規定により延長戦は行われず、勝負はPK戦に委ねられることになった。

 先攻となった日本は2人目のキッカー、明本のシュートが相手GKに止められるものの、その後のイタリアのキッカーが大きく枠をはずしてタイスコアに。その後は両チーム順調に決めて6巡目に突入する。日本は6人目の森下がキックを成功させるが、イタリアはその後のキッカーのシュートがポストを直撃。この瞬間、日本の“ライバル”イタリアを倒しての2年連続の決勝進出が決定。イタリアとの通算戦績を4勝4敗のイーブンに戻した。



 決勝戦は7月13日(土)の21:00(日本時間、7月14日朝04:00)に行われる。対戦相手は南米の雄・ブラジル。大会前にはトレーニングマッチを行い、3-0で勝った相手だが「あのときとは別のチームになっている」とスタッフ、選手は口を揃える。ユニバーシアードでの対戦成績は3勝0敗と相性のいい相手ではあるが、最近対戦した2015年の光州大会ではグループリーグでは1-0、順位決定戦では0-0のPK戦で勝敗を決めるなど、僅差で勝っているだけに油断はできない。「ここまできて優勝できなかったら意味がない」という小柏の言葉どおり、“最後のユニバーシアード”に勝って台北大会に続く金メダルを手にしたい。



松本直也監督


 準々決勝で韓国には勝ちましたが、準決勝のイタリア戦もアウェーの状況で、大変厳しい戦いになるとは思っていました。ただ、イタリアも日本同様ターンオーバーでメンバーを組んできたので、やりやすい部分はありました。いい形でボールを保持できていたし、3点を取る攻撃力は非常によかった。小柏選手のように、日本人独特の、小さくてもスピードがある、という特色を活かして、よく戦ってくれたと思います。イタリアにやられるとしたら、セットプレーかロングボールだろうと警戒はしていたのですが、やはりああいう形になった。試合終盤になると日本も疲れてきて、対応ができなくなってしまった。最後のハンドは仕方ないと思いますが、よくPK戦で勝ってくれました。決勝戦は互いに4試合を戦ったうえでの総力戦になりますが、幸い日本には累積警告も怪我人もいない。これがこのチームで戦う最後の試合になります。もう一度20人でいい準備をして、優勝を目指したいと思います。


阿部航斗(GK・4年・筑波大)



 昨日の練習のあと「PK戦の前に試合を決めたい」と言っていたことを実現できなかったのが残念ですし、失点の部分は申し訳ないと思っています。結果的に次に進めたのでほっとしました。会場の(イタリアを応援する)観客の声やブーイングはあまり気にならなかったし、集中はできていたと思います。ただ3-1になった時点での、2点差での試合運びについては反省点があります。自分を含めた後ろの選手が、もう少しコーチングでチームの戦い方を統一することが必要でした。大柄な選手やハイボールに対しては自分が前に出ることで、失点の可能性は減らせるとは思っていました。それでも2失点目などは判断が誤ってしまったので、課題は残ります。個人的にはアウェーの雰囲気のほうが守れる感覚があって試合前から気合いは入っていました。最終的には勝って、地元の観客を黙らせることができてよかったと思います。


小柏剛(FW・3年・明治大)



 この大会ではずっと得点を狙っていて、シュートをどんどん打つようにしていたのですが、韓国戦とイタリア戦、やることを変えずにシュートを打ち続けてきたことで、2試合連続2ゴールという結果につながったと思います。相手は外国人選手ということで、ふだん日本の大学サッカーで対戦している選手のようなアジリティーはないと感じていました。ロシア戦のころから自分が縦に突破できるのは感じていましたし、縦に突破すればクロスから点を取れる選手はいるので、今日の試合でも意識して縦に仕掛けました。得点シーンの前に、明本選手とは一度背後に抜けるプレーをしようという話をしていました。そうしたら明本選手から自分を走らせてくれるボールが出たので、あとは自分のスピードを活かすだけでした。最後はGKとの1対1をかわして、落ち着いて流し込めてよかったです。決勝の相手のブラジルとは、大会前に練習試合をして勝っていますが、そのときとはまた違うチームになっていると思います。次で負けたら意味がないので隙を見せず、自分たちのやるべきことをしっかりやって優勝したいと思います。


児玉駿斗(MF・4年・東海学園大)



 得点シーンはあまり覚えていないのですが。林選手が前で潰れて自分のところにボールがきたので、思わず体が動いたという感じです。これまで、あんなふうに滑り込むようなシュートはしたことはないし、そういう意味では自分らしくないゴールだったと思います。ただ1失点目は、自分のミスで相手にCKを与えてしまったことがきっかけになったので、絶対に点を取らないと、とは思っていました。この大会は大柄な外国人選手が相手になりますから、逆に狭いところでボールを受けるといったような、自分のプレーをもっと出せればいいと思っています。ただ、この大会は個人というよりチーム全体で戦っているので、今日のような試合に勝てたのは本当に大きい。次の決勝戦も勝って、みんなで優勝の喜びを分かち合いたいと思います。


明本考浩(MF・4年・国士舘大)



 素直に勝てたことはうれしいのですが、3-1になったときの戦い方には課題が残りました。チーム全体として統一して「こういう戦いをしよう」という話をゲーム中にできていたら、もっとよかったと思います。2点差になって、心の中でどこかしら余裕が出てきたというか、少し集中力が切れてしまった。そういうときの対応は修正の余地があると思います。
 個人的には、イタリア戦で前にいく推進力を出せたのがよかったと思います。このチームは、前のほうにすごいタレントが揃っているので、自分はバランスを見ながら守備の部分で貢献して、速くボールをつなぐことを意識していました。でもイタリア戦ではスペースが空いていたので。自分で運ぶ、という選択ができました。(小柏)剛とは常に試合前に話をしているのですが、1点目のアシストの時は剛と目が合っていました。あのパスで剛の特長をうまく引き出せたかな、とは思います。2点目は自分で運ぶことで、空いてを1枚はがすことができた。そこから先は(金子)拓郎しか見えていなかったので、拓郎頼みだったんですが(笑)。結果的にアシストになってよかったです。でもPK戦は外してしまったので……。PKは立候補して蹴らしてもらったし、あの(圧倒的にアウェーな)雰囲気の中でもプレッシャーは全然感じなかったのですが……あれはGKを褒めるだけです。


山原怜音(DF・2年・筑波大)



 対戦相手のイタリアは開催国なので、最初は相手のホームの雰囲気に少し呑まれてしまいました。イタリアは守備もしっかりしているし、攻撃も迫力あるし、非常に難しい試合でした。前半はあまりボールに触っていないのですが、自分が幅をとっている分、右サイドの金子拓郎選手にはフリーでボールが渡って何度かチャンスを作れていました。僕が囮になってほかの選手がフリーになるのであれば、自分の動きは無駄にはなっていないと思います。失点シーンについては、ショートコーナーに準備していた選手がいたのでケアに行ったのですが、その選手が戻ったときに自分の戻りが遅くて。もう1、2歩僕が下がっていれば前に弾けていたと思うし、オウンゴールにはならなかったと思うので、そこは自分のミスだったと思います。
 まだアシストやゴールなど、得点に絡むプレーができていないので、そこは自分の課題です。ラスト1試合、決勝戦で自分がチームを勝たせるようなプレーをしなくてはならないと思っています。ブラジルは、大会前の練習試合のときとはまったく別のチームになっているので、違う相手だと思って気を引き締めて戦いたいと思います。