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【特別対談】『#atarimaeni CUP』特別対談 外池大亮(早稲田大学監督)×チョウ・キジェ(流通経済大学コーチ)
2021/01/13


本年度唯一の全国大会『#atarimaeni CUP サッカーができる当たり前に、ありがとう!』も準決勝と決勝の3試合を残すだけとなった。コロナ禍に揺れた1年間を通じて、大学サッカーの指導者たちは、どんな想いで学生たちと向き合ったのか。早稲田大学の先輩後輩の間柄でもあり、プロでは指導者と選手して、またJクラブ監督とメディアという多様な関係性を築いてきた、早稲田大学の外池大亮監督と、流通経済大学のチョウ・キジェコーチ。今年、大学サッカーの指導者として再会し、『「アミノバイタル®」カップ』の決勝戦では、タイトルを懸けて対峙したふたり。『#atarimaeni CUP』での再戦は叶わなかったが、この1年を通じて感じた大学サッカーの魅力、指導者の目から見た可能性を心ゆくまで語ってもらった。

(2020年12月21日・オンラインにて取材)


大学生はこれから社会に向かう直前の世代。
本質的にどう向き合っていくか(外池)



――現在、早稲田大学の監督、そして流通経済大学のコーチとして大学サッカーに携わるおふたりですが、ご自身の大学現役時代と比べての印象は?

外池大亮:僕は早大の監督になる2年ほど前から、『スカパー!』というメディアの立場で、大学サッカーをコンテンツとした番組づくりに携わらせてもらっていました。自分が大学生だった頃、もう20年以上前になりますけど、その時代から比べるとかなり様変わりしたな、というのが第一印象です。僕たちの時代は関東1部、2部ともに8チーム制、そしてリーグ戦は秋だけ。それが今は、1部2部12チーム制になっていて、かつ春秋でリーグ戦を行う。試合自体が増えたのはもちろんのことですが、流経大さんや桐蔭横浜大学さんといった、僕たちの時代にはいなかった新しい大学さんが、実力的にもバリュー的にも存在感を発揮している。Jリーグがスタートして27年、その変遷と共に大学サッカーの枠組みや位置づけも変化してきたのではないかな、と思いますね。



チョウ・キジェ:僕も外池と同様、早大を卒業した人間ですが、大学時代というのは自分の人格形成に大きく影響を与えられた4年間だと思っています。先輩後輩の関係、同期とのつながりとか、社会に出る前の小社会といいますか。30年以上前の話ですが、すごく鍛えられた印象があります。だから卒業してからも常々、後輩たちのために自分ができることはやっていきたいな、とは思っていました。プロの指導者になったあとは、たまたま早大から三竿雄斗(2013年卒・現大分)とか後藤雅明(2017年卒・現金沢)が入ってきたということもあって、母校の動向は常に気にしていましたね。ただ、僕が母校の試合を観に行くとあまり勝てない(笑)。4年前の平塚(Shonan BMWスタジアム平塚)とかね。前監督の古賀(聡)さんが指導されていたときは、2部リーグ降格の瞬間に立ち会うことになって、「ちょっとなんで!?」と思いましたけど(笑)。でも外池がきてからはね。1部リーグで優勝したり(2018年)、大学を引っ張っていく、リーダー的立場の大学としてがんばっているな、と頼もしく思っていました。たまたま縁があって、今季は流経大のコーチをやらせてもらっていますが、母校への思いとは別に、プロのカテゴリーから大学の指導者を経験できたことは、自分にとってすごくプラスになっています。自分は指導者として、小学生、中学生、高校生、そしてプロを指導したことはあるんですけど、大学生だけはなかった。ここで大学サッカーに携わるのも運命なのかな、と思いながら、毎日選手たちと向き合っています。プロ監督としての自分の経験にプラスして、大人であり子供である彼らの年代にどう触れていくのか。自分の中で興味深かったし、毎日楽しく、学ぶものを得ながらやらせてもらっています。



――まさに「大人であり子どもでもある」大学生というカテゴリーを指導するうえで、大切にしていることでしょう。

外池:僕自身もまさに大人であり子どもなんですけどね(笑)。大学生というのは、これから社会に向かう直前の世代。だからこそ、本質的にどう向き合っていくのか、というのがひとつのポイントかなと感じています。学生自身がどういうことを考えていて、社会に何を期待していて、どう社会を見ているのか。そういうところにひとつひとつ寄り添うところから意識しています。それは社会の中にあるサッカー、Jリーグも含めてのことだと思うのですが。



チョウ:僕たちの時代もそうでしたが、大学生って比較的時間があるんです。もちろん月曜日から金曜日までは授業に出る、練習があるという枠組みは決まっていますが、それ以外は自分の好きなことができる。興味のあるものを突き詰めるとか、本を読むとか、英会話を勉強するとか、人間関係を広げるとか。時間がある中で、いかに取捨選択ができるかがポイントだと思っています。サッカーというものをいちばん大切なところに置きながら、取捨選択をできる大事な4年間を過ごしてほしい。試合の勝ち負けや優勝といった目的もありますが、降格しようが負けようが、自分の考え方次第ではすべて人生にとってのプラスにできる。そういうことを示唆してあげられるのは、この大学時代しかできないことだと思っています。大学の指導者は、そういうことを学ぶ機会も与えていると考えると、非常に責任のあるポジションだと思います。流経大には中野雄二監督、大平正軌コーチをはじめ、そういう思いをもった指導者が多くいますし、大学サッカー界全体にも、そういう考え方の指導者があふれています。多感なこの時期に誰と出会うか、どういうものを積み上がるかが、その後の人生の、ひとつの指針になるのは間違いないと思います。



大学は取捨選択のできる大事な4年間(チョウ)





――おふたりは早大の先輩後輩であり、湘南ベルマーレでは指導者と選手という間柄でもありました。今は、ともに大学サッカー指導者という立場ですが、事前に連絡などはとっていたのでしょうか。

チョウ:連絡したよね? もらったのか、したのか忘れたけど(笑)。練習試合の話をしたと思う。



外池:そうですね。けっこう早い段階で、流経大と練習試合を組ませていただきました。そのときもチョウさんには早大の学生たちにありがたい言葉をいただいて。なんといってもチョウさんは早稲田のOB、重鎮ですから(笑)。



チョウ:いやいや(笑)。



外池:僕は『スカパー!』のスタッフとしてJリーグの中継をしていたので、その中でチョウさんに取材をさせていただくこともありました。そのつながりもあって、早大の監督になった最初の年には湘南と練習試合をさせてもらったこともあります。大学の先輩後輩とはいっても、学年としてはかぶっていないし、本来であれば口も利けない感じなんですが(笑)。うまくお付き合いをさせてもらっているんじゃないかな、と個人的には自負しています。



――お互いを指導者として見たときの驚きはありましたか?

外池:チョウさんとは昨年の『「アミノバイタル®」カップ 関東大学サッカートーナメント大会』(以下『「アミノバイタル®」カップ』)の決勝で対戦させていただきました(3-2で流経大が優勝)。流経大さんの試合を分析する中で感じたのは、そこに落とし込まれている戦術みたいなものではなく、学生ひとりひとりのマインドセットみたいなところが整備されていて、とても行き届いているな、ということ。それこそが、チョウさんという存在の影響なんだろうな、とは感じました。チョウさんがくる前の2019年には、流経大さんと一緒に1部リーグ残留争いもしましたが、その経験も含めて、そこからどう這い上がっていくのか、みたいな流れと強さを感じています。強いです。本当に。



――チョウさんの目には、母校率いる外池監督の指導はどのように映っているのでしょう。

チョウ:そもそも僕にとって、早大はずっと応援してきた大学。だから本当に「がんばって強くしてください。学生にいい経験をさせてあげてください」っていうのが前提だよね(笑)。外池が本格的に指導に携わるのは初めてだって聞いていましたし、その中で、外池なりのポリシーやアイデンティティーを学生たちに落とし込んでいるというのは、すごくいいことだと思っていました。指導者ってなにかをやると「それは違う」とか、やらなければ「もっとやったほうがいい」とか、常に周りにたくさんの声があるわけです。でも最後に決めるのは自分。どの仕事もそうだとは思いますが、その決断こそが求められる仕事だと思います。早稲田大学ア式蹴球部を見ていると、練習における緊張感や仲間を思いやるサッカーというものをすごく感じる。ピッチ以外のことでも、自分たちで文化を作っていくんだ、という気概のあるチームだという印象ですね。だから『「アミノバイタル®」カップ』の決勝で対戦したときは、いい試合になるだろうというのはわかっていました。勝つとか負けるとかより、お互いにいいところが出せるような試合をしてほしい、ということだけ考えていました。実際、終了間際に早大に点を取られて、奇跡的にウチが追いついて延長戦になったという試合内容が示すとおり、とてもおもしろい試合になった。あんなことって、なかなか起きないだろうと思う。なにより、お互いに勝ちたいという気持ちをフェアに出せた試合だったことがうれしかったですね。それこそ、勝ったとか優勝したということよりも。試合後すぐに早大の選手をねぎらいにいったのも、本当に、心の底からこれからもがんばってほしいと思ったから。彼らがこうした試合を経験して、流経大の選手と一緒に成長して、大学サッカーを盛り上げていってほしいという気持ちでした。




『「アミノバイタル®」カップ』の決勝は、
お互いに勝ちたいという気持ちを
フェアに出せた試合だったことがうれしかった(チョウ)






――早大は1部、流経大は2部。本来であればなかなか対戦機会はないと思います。シーズン前に対戦は予想していましたか?

チョウ:僕、大学サッカーについては、いつ、どこで何の大会があるのか全然わからなくて(笑)。いつも中野さんに教えてもらっているくらいだから、そんなことを考える余裕もなかったですね。自分の大学時代からすると試合数も違うし「え、こんなときにこんな試合があるの? Iリーグって何?」みたいな感じ(笑)。でも、1部と2部に分かれているから、対戦はないのかなって思っていました。



外池:僕は正直、とても意識していました。早稲田のOB、それもJを経験した方が早稲田ではない大学で指導をする。もともと、その生き様やキャリアも含めて注目していた方ですし。対戦するとしたら、『「アミノバイタル®」カップ』か『総理大臣杯』か『インカレ』だとは思っていましたが(総理大臣杯、インカレともコロナ禍により中止)、最初にトレーニングマッチをさせてもらっていた時には、流経大は十分、対戦する可能性のあるチームだなと思っていました。



チョウ:『「アミノバイタル®」カップ』の決勝は、90分間の試合と考えると引き分けだったから。



外池:いやいやいやいや。トーナメントの大会ですから。PKも含めて勝ち上がれるかどうかっていう試合です!




――実際に対戦してみて、相手のチームの強みだと感じたところは?

チョウ:早稲田は伝統的にも、ひとりの選手を活かすために10人ががんばるというよりは、全員で同じことに向かって攻撃も守備も、というチームですね。大学レベルでは、簡単に点はとれない。だから流経大としては、(攻撃を)続けて続けていくことで、守備に穴が開くことを願うしかないというか。こちらとしても早大のそういうサッカーを学びながら、スキを作ってはいけないという感じ。実際、『「アミノバイタル®」カップ』の決勝戦はそういう試合でした。得点はPKとスローインからとか、互いに決めるチャンスはそう多くはなかった。プロの世界でも実力が伯仲すると、そういう内容のゲームって多いんですよね。(試合の流れが)行ったり来たりするゲームも面白いと思いますが、互いにスキを与えない試合というのは、指導者からするとすごく緊張感があって勉強になる。そういう展開になると、早大のほうに一日の長があるかな、って僕は少し思っていましたけどね(笑)。流経大にラッキーな部分があって、むしろあの展開なら早大のほうが力をもっていた、という印象は今でもあります。



外池:流経大は出ているメンバー全員がタフというか。たくましいうえに、サッカーとしてのベースが高い。『「アミノバイタル®」カップ』の決勝戦では、そうした相手に我々がどう有効な状況を作っていくのか、どう隙間を見つけていくのか、ということを学生とともに考えました。ボールの動かし方とか、そういう中でどう隙間を見つけていくのか。ただ予想以上に流経大の圧力が強かったので、前半はほとんど意図的にボールを動かすという状況をつくれなかった。ハーフタイムには、かなり修正を加えたことを思い出しますね。




難しい状況を乗り越えて『#atarimaeni CUP』に臨んでいるから
学生たちのモチベーションは高い。強い想いをもって臨む大会(外池)





――「#atarimaeni CUP」を見てくださるお客様に、おふたりの目から見た大学サッカーの魅力、ポテンシャルについて教えていただけますか。

チョウ:大学サッカーの先輩ですから、外池先輩からどうぞ(笑)。



外池:(笑)。シンプルにいって、レベルが高いです。ただ今シーズンは、我々関東大学サッカーリーグ戦においても難しい状況の中でサッカーをしてきました。おそらくは全国でもそういう難しい状況を乗り越えて、この大会に臨んでいると思います。そういう意味では、学生たちのモチベーションは高いし、とても強い想いをもって臨む大会になると思います。まずは、その想いをぜひ感じ取っていただきたいですね。僕は試合に臨む前、相手の大学の歴史とか、校風、成り立ちといったものを調べて、学生たちと共有するようにしています。ただ大学サッカーで対戦する相手ではなく、その大学のいろいろな背景、文化や歴史といったものから分析できるものがあると思うんです。それぞれの大学のカラーが、サッカーに落とし込まれていると感じることも多いので、ぜひそういったところも楽しみにしていただきたい。我々としてはやはり、「早稲田ここにあり」というところを、チョウ先輩の期待にも応えられるようにお見せしたい。その姿を見せつつ、流経大さんにリベンジして優勝を目指したいと思います。



チョウ:今季、僕は流経大の中野監督はじめスタッフの皆さんはもちろん、選手たちにもすごく感謝をしています。S級ライセンス停止というタイミングで流経大で研修させていただいたことで、指導者としての自分の反省、振り返りなどを含め、ピッチに立つ時間を持つことができました。僕は大学サッカーの素人だと思ってやってきたので、外池監督をはじめ他大学の指導者にも、いろいろなことを教えてもらいながらここまできました。大学サッカーに触れ合うことで、シンプルに人に対する思いやりや感謝の気持ちが、こう、増したというか。そういうものが強くなれた時間だったと思います。ましてやこのコロナ禍です。サッカー自体ができるのかわからない中で、みんなで協力しつつこの状況を乗り越え、この『#atarimaeni CUP』に臨めるということが本当にうれしい。僕自身もその感謝の気持ちをピッチに投影したいと思います。選手たちには、サッカーができることを楽しみながら、悔いのないようにやってもらいたいし、それぞれの大学も、そういう試合で今季の最後を迎えられるよう、フェアでいい大会にしたいと思います。




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